......今、とても大事な言葉を聞いた気がした。
「え?」
「オレさ、腹の中にいたころより前の記憶もあるって言っただろ?」
「......言ってたね」
「実はオレ、前世の記憶っていうのが残ってるんだ。大学院生で、将来学校の先生になるはずだった、二十四歳のオレの記憶、聞いてくれる?」
「うん、聞かせて」
わたしは、静かに彼の話を待った。
「どこから話せばいいかな? ええと、オレの前世の両親は、学校の先生だったんだ。毎日忙しくしていて、平日なんてちっともかまってもらえなかった。オレとクラスの子ども、どっちが大事って聞いたこともあるくらいだったよ」
「それで、何て答えてくれたの?」
「オレが世界で一番大事な宝物だって。うれしかったな。でも、こうも言ってたんだ。『世界で一番大事な宝物を三十人も預かっているんだから、お母さんは仕事も手を抜けないの』ってね。父も似たようなことを言ってた」
そっか......普通の両親にとって、子どもは宝物だったんだ。わたしは違ったみたいだけれど。そんな私の気持ちを察したのか、健斗君はすぐに話題を変えた。
「それでも、忙しすぎる両親を見ていたから、オレは絶対に学校の先生にはならないぞって思っていたんだ......小学六年までは」
そう言って、健斗君は一度言葉を詰まらせた。


