涙をぽろぽろこぼしながら、昔を思い出した。
お父さんの幸せと、わたしの幸せはちがった。
お母さんの幸せには、新しいお父さんと妹達だけが必要だった。
わたしの幸せは、まだ見つからないままだけど......。
「誰かを犠牲にしながら、幸せになんてなりたくないよ。わたしが生まれかわったら、元々幸せになるはずだった赤ちゃんが不幸になるかも知れない。そんなの許されない! だからわたしはこのまま帰って、健斗君との約束を果たすからねっ! 借りを作るのも、約束を破るのもきらいなの!」
わたしの訴えを聞いていた健斗君が、ぽつりと言った。
「紗也ちゃんの泣き顔を見てるのに、今のオレは手も足も出ない。胸もハンカチも貸せない。でも......無事に戻ることができたら、いっぱい沙也ちゃんの辛さを受け止めるから。そのための勉強を前世でしていたんだ」


