約束
そして、健斗君は、骨髄移植がわたしたちの世界でどのように行われているのか、マスターとサーヤ姫に一生懸命説明した。
「人間の体の血液は、骨から作られます。元気な血を......えっと、口で説明するのは難しいな! 絵も描けないもんなあ、今のオレ。沙也ちゃん、腰に手を当てて。牛乳一気飲みする時のあのポーズだよ! そう、この辺り。腸骨って言って、ここが人間の体で一番大きな骨です。ここから『元気な血の基』を抜き取ります。基本、全身麻酔......意識も痛みも無くした状態でそれは行われ......」
マスターはわたしとサーヤ姫の体を指差しながら、健斗君の説明を真剣に聞いていた。
「解った。本当にそれだけなのか! 確かに魂を入れ替えるよりもずっと簡単そうだな。これでサーヤの体は元通りになるのか?」
「もちろん、百%ではないかも知れないけど、全く同じ型だから、成功率はかなり高いです。移植がうまくいけば、前と同じ生活ができるでしょう。ただ、これだけ限界まで治療した場合、ひとつ問題があります。サーヤ姫には辛い話だと思うけど、知らせないとフェアじゃないから」
「教えて下さい」
サーヤ姫がきっぱりと言った。
「じゃあ正直に伝えるよ。多くの場合、そうだというだけで、サーヤ姫もそうなのかは、詳しく調べなくちゃわからないけれど。......子どもが、産めない可能性が高いんだ」


