同じ体、ちがう人格
「沙也ちゃんとサーヤ姫は全く同じ体を持っているということが本当だとしたら、白血球の型も一致する。つまり、骨髄バンクに頼らなくても、ドナーがいて治療できるってこと」
「確かに!」
「魂を入れ替える必要なんてない。骨髄(こつずい)移植(いしょく)が成功すれば、サーヤ姫は元気な体になる。限界まで治療したって言ってたし。移植の場合も、ドナーが見つかり次第、限界まで治療するはず。さあ、マスター、どうしますか?」
マスターは思い描いていた治療法とちがうことを提示されて、とまどっているようだったけれど、私の目をじっと見て、ゆっくり答えてくれた。
「サーヤと沙也がそれで良いのなら......。しかし、そんな事で本当に病気が治るのか?」
「オレ達の世界では、魂を入れ替える方があり得ないんです!」
「人面瘡には言われたくないセリフだよね」
わたしがつい口に出した言葉に、健斗君がわざとらしく咳払いをした。
「とにかくっ! 沙也ちゃんは体を明け渡す必要なんてないし、サーヤ姫もちゃんと元気になる! これで文句ないでしょう?」
「サーヤは、本当に元通りになれるのか?」
マスターが心配しているのは、サーヤ姫の命のことだけじゃないって、わたしには解った。もしかしたら、マスターもサーヤ姫のことが......?


