わたしも読んだことがある。小学生の頃、家に帰りたくなくて、閉館ぎりぎりまでいた図書館で。
がんばればいつかは報われる、そんな伝記を読むのが好きだったわたし。女の人の伝記はあんまりなくて、大抵のものは読んだと思う。
ヘレン・ケラー、ナイチンゲール、アンネ・フランク、そしてキュリー夫人。
わたしの記憶が正しければ、確かキュリー夫人は......!
「マスター、その錬金術師さん達は、今どうしてるんですか?」
もしかしたらもう、間に合わないかも?
「皆、病にかかり、死んだと聞いた。だから、その光る石の祭具はそれ一つだけだ。今ではもう、誰も作り方を知らないからな」
「やっぱり。みんな、キュリー夫人と同じく、白血病になって亡くなったのかも」
「そうだな。これだけ状況が似ていたら、おそらくサーヤ姫も白血病だ。まずその石は、その宝箱に入れたまま、できるだけ地中深くに埋めて、二度と出さないでください! 今のこの世界では、それ位しかできないと思うから。ただし、サーヤ姫の治療法は、あと一つだけ残されています。できるかどうかは、マスターの『シャーマン』としてのうでにかかっていますけれどね」
人面瘡とは思えない、挑戦的な表情で、健斗君はマスターに言い放った。
「魂を入れ替えることもできるこの国一番のシャーマンなら、当然できるでしょう? 沙也ちゃんの体の一部を、サーヤ姫に移すことが!」


