「......オレ、そういうゲームやったことがある。ゴミだのその辺の石ころだのを錬金して、最終的には賢者の石を作っちゃう女の子が主人公っていう......現実にやっちゃうとはすごい世界だよな、ここって」
健斗君がひとり、ゲームと同じだと感心している中、わたしはマスターに聞いてみた。
「その光る石って、ダイヤモンドのようなもの......えっと、光が反射してキラキラ輝くようなものですか?」
わたしが質問すると、すぐにマスターは首を横に振った。
「いや、全然違う。本当に『光る』のだ。燃えている訳ではないのに、闇夜でも周りが明るくなるほどの光を放つ石だ」
「それじゃあ、光をたくわえて、後からそれを放出しているとか?」
蓄光なら、わたしの時計の文字盤だってそうだけど。
「いや、ずっと宝箱に入れておいても、その宝箱の中で青白く光り続けている」
「......わかった、その錬金術師は、オレ達の世界でいうところの、キュリー夫人と同じことをやったんだろう」
健斗君は懐かしい名前を出してきた。
「キュリー夫人って、あの伝記の?」
「そういうこと。キュリー夫人と同じような方法で、偶然ラジウムか何かを作り出しちゃったんだろうな。キュリー夫人と旦那さんが、暗い実験室の中で光ったラジウムを見て感激したって話、伝記で読んだぞ」


