マスターは理解できていない。
「つまり、神かくしの犯人はオレってことになって、牢屋に入れられる!」
「逃げれば良い。健斗の力で、離脱するのだ」
「そういう問題じゃないんだけど。とにかく、元の世界の沙也ちゃんは消えたことになるのか」
わたしの存在が消える......。いいよ、それでも。消えたいって願っていたくらいだもの。
サーヤ姫のためになるなら。わたしが幸せになれるなら。
「疑問その二。じゃあ、沙也ちゃんが新しい人生を送るために赤ん坊に乗り移ったとしたら、本来の赤ん坊の魂はどこに行くんですか?」
「生まれる前の赤子に、魂などない」
「いや、絶対ある! オレ、腹の中にいた記憶があるから。あったかくて気持ちよくて、出たくなかった。それより前の記憶だってある。沙也ちゃんが来ちゃったら、その赤ん坊、行き場がなくなるのではないですか?」
お母さんのお腹の中にいた記憶があるって、すごいかも。いや、それより、さらっと話していたけれど、お腹の中よりも前の記憶って......?
ただはっきりしているのは、わたしのせいで、赤ちゃんが一人犠牲になるとしたら、それはいやだということ。
考えこんでいるわたしとマスターに対して、健斗君はさらに疑問を投げかけてきた。
「疑問その三。サーヤ姫の病気って、何ですか? さっきちらっと言ってたけれど、歴代の巫女姫もみんな同じ病気になったということですか? だとしたら、何か原因があるはずです。その原因を取り除かない限り、仮に体だけ新しくしても、また病気になる。それじゃあ、サーヤ姫はまた苦しむし、沙也ちゃんの善意もムダになります!」


