うなずいてから、ドアを開けた。
ドアの向こうに、さらにカーテンがかかっている。
カーテンの真ん中から顔を出して部屋の中へ入る。
そこは女の子のお部屋、ではなかった。
病室そのもの。
大きなベッドが部屋の真ん中に置かれ、その横にはテーブルとたな。ビンが沢山並んでいて、いろんな薬が調合されているみたい。
ベッドの足元に置かれた椅子に座っていたマスターが、静かに立ち上がる。
「サーヤは今、眠っている。起こさないで欲しい。起きるとまた、苦しくなるから......」
わたしはうなずくと、そっとベッドの枕元へ移動した。
健斗君にも見えやすいように、ローブの袖を少し捲る。
やっと、サーヤ姫の顔を見たとたん、わたしは震えた。
髪の毛が、何もなかった。
まゆ毛も、まつ毛もない。
わたしがあと十キロ以上やせたら、こんな風になっちゃうんだろうなっていうくらい、やせ細っている。
お肌とくちびるは乾いているように見えた。
どれだけ過酷な闘病生活だったんだろう。
この状態になるまで、サーヤ姫はがんばったんだ。
きっと、かなり苦しんだと思う。
視界が涙でぼやけた。
やつれてしまったサーヤ姫の顔を見るのが辛い。
わたしはそっと、ベッドから離れた。


