「沙也、まずは体を清めて欲しい。そしてこちらが用意したものに着替えるように。浴場はこの奥だ。中で侍女が待機している」
そう言って、マスターはまたさっきの部屋へ戻って行った。
一時も離れられないほど、サーヤ姫は今、危険な状態なんだろうか?
わたしは急いで、マスターに教わったお風呂場のドアを開けた。
そこには、このお屋敷のメイドさんらしき人が数名いた。
みんな可愛い! しかもエプロンドレスが水色だから、メイドさんというより、不思議の国のアリスみたい。
「マスターから伺いました。こちらへどうぞ」と、素早く案内された場所。
それは、どこかの健康ランドにありそうなゴージャスなお風呂だった。白い大理石の浴槽の横には、大きなライオンの頭がついていて、その口からお湯があふれ出ている。
「お手伝いいたします」
「いいえっ! わたし一人で大丈夫です!」
というやり取りの後、何とか一人でゴージャスバスタイム。
正確にはもう一人いるけれど。
「うががががっ! ちょっと沙也ちゃん、お湯でぬれたリストバンドが鼻に当たっていやな感じなんだけど」
「アンドリュー王子とシン王子なんて、お湯に丸ごとつかってたんだから。手首を湯船につけられてないだけ、ましなの。がまんしてよ」
さらっと聞き流すわたし。健斗君もあきらめたらしく、リストバンドの下でぶーぶー文句を言いながらも、話しかけてきた。


