場違いなわたしの声が、ホールに響き渡ったその時。
二階の奥の部屋のドアが開いた。
そこから出てきたのは、真っ白いローブを身にまとい、頭をフードですっぽりとおおっている人だった。
この人が、この国一番のシャーマン、なんだろうか?
確か『マスター』って呼ばれていたんだよね。
わたしもそう呼んでも大丈夫かな?
「あ、あのっ、はじめましてっ! わたし、相馬沙也です。こんにちはっ!」
らせん階段を静かに降りてくるマスターに、わたしはぴょこんとおじぎをしつつ、ごあいさつをした。
近づくにつれて、そのお顔がわかるかな、と思ったんだけど。
マスターの表情がかろうじて見えるのは、目、だけだった。
鼻と口もすっぽりとマスクのようなものでおおわれ、目から上はフードにかくれて見えない。
でも、その目が......向かって右側は金色、左側が白金に見えた。
うわぁ、カラーコンタクトではないよね?
つい、じっと見つめてしまったわたしは、向こうからも見つめられてドキドキした。
なななんか、この人、さすがにすごい力の持ち主らしくて、わたしもついざんげしちゃいそうなんですけれど。
おばあちゃんに「美奈の家へ行く」なんて嘘ついちゃってごめんなさいっ!
健斗君がおごってくれるって言ったのをいいことに、あんなにいっぱい注文しちゃってごめんなさいっ!
それからそれから......。
「沙也、それから健斗、待ってたぞ」
マスクにさえぎられてはいるけれど、しっかりとしたバリトンが館に響いた。


