覚悟を決めて、重厚なドアを、そっと引いてみる。
静かに開いた。まずは入口に鳥かごを置く。首をかしげてわたしを見上げる可愛いハトに、いいこで待っててね、と声をかけた。エサとお水はたっぷり入ってるみたい。
もう一つのドアが、すぐ正面にあった。
こちらも大きなドアで、立派な彫刻が施されていた。
「ねえ、お城もすごかったけど、ここもすごいお家だよね?」
わたしはこっそり健斗君に話しかける。
さっきまで門番がいたから、しゃべることができなかったんだもん。
「うん。ここに王子二人をとりこにしたサーヤ姫がいるのか......」
「......どうせわたしと同じなんだから、そんなに期待したらがっかりするかもよっ」
健斗君の興味は、どうやら家よりサーヤ姫の容姿らしい。
彫刻に見とれつつドアを開けると、そこはまさにホールだった。
高い天井、二階までの吹き抜けで、テニスコート三つ分ほどの広さがある。
部屋の両側にらせん階段がついていて、二階へとつながっている。
二階には、一体何部屋あるんだろうっていう感じ。
こんなに広いお屋敷なのに、使用人らしき人が見当たらなかった。もしや、わたしって歓迎されていないんじゃないだろうか。
仕方がないので、わたしは大声でご挨拶してみた。
「おじゃましてま~す。相馬沙也ですけど、誰かいませんか~~~」


