馬車は私とハトを置いて、お城へ戻ってしまった。
別れ際、アンドリュー王子はわたしに 「サーヤ姫を頼む......」と、言い残した。
「わたしにできることは全部するよ」
今はまだ、こう答えることしかできない。
だって、会ったこともない、どんな状態なのかもわからない人だもん。
もしかしたら、もう、手遅れなのかも知れない。
それでもわたしは、サーヤ姫を助けるためにここへ来たんだから。
門番が鳥かごを持って、お屋敷まで案内してくれた。
広い敷地。
まだ七歳の頃、ここへ連れてこられたというサーヤ姫は、この庭で遊んだことがあるのだろうか?
修行に明け暮れた四年間だったって聞いたけど、少しは羽を伸ばせる時間もあったのかな?
サーヤ姫はそんな『力』を持っていて、本当に幸せだったのかな?
わたしの頭は、疑問でいっぱいだった。
門から屋敷の入口まで、十分は歩いたと思う。
やっとたどり着いたわたしに、門番は鳥かごを渡してこう言った。
「ここから先は、私も入れません。鳥かごはエントランスホールへ置いてください。では、サーヤ姫をお願い致します」
えええっ! わたし一人で、いや、正確にはわたしと人面瘡だけで乗り込むの?


