「そろそろ、目的地だ」
アンドリュー王子の言葉で、わたしは外を注意深くながめる。
大きくて立派なお屋敷が見えた。
お城とは違って、高さはないけれど、広さがありそうな感じ。
周りにはたくさんの木が植えられていて、外からは中の様子がほとんどわからない。
ここに、偉大なシャーマンと、サーヤ姫がいるんだ。
馬車が門を通り過ぎようとした時、門番がそれを静止した。
「無礼者! 我を通さぬと申すのか!」
すると門番が、封書を持ってアンドリュー王子へ近づいてきた。
「大変申し訳ありませんが、たとえ国王陛下であってもお通しする訳には参りません。『今後、許可があるまで、ここを通ることができるのは、異世界から召喚した娘のみ』と我がマスターから厳命されております。サーヤ姫の治療のため、他の人間を近づけてはならないそうです」
わたしには読めないその手紙には、何かアンドリュー王子を納得させるための言葉が書いてあったらしく。
険しい顔をしながらも、アンドリュー王子はしぶしぶ納得したようだった。
「承知した。では、沙也をこの屋敷へ案内してやってくれ。我は一度、城へ帰る。何かあったら、これを飛ばすように」
御者の隣に置いてあった鳥かごを、わたしに渡してくれた。
......こんなものまで用意していたなんて、知らなかった。
真っ白くて、きれいな目をしたハト。足には小さな筒状のものが付けられていた。


