確かに、アンドリュー王子のお城でぐっすり眠っていて、のんびり優雅に朝食をいただいて、今は馬車に揺られているんだから、そのくらいの時間が過ぎていてもおかしくない。
私の疑問に、アンドリュー王子が答えてくれた。
「その通り。もうそれだけの時間は過ぎている。我らが沙也の世界に居たのは、たったの三日だと思っていたのだが、こちらへ戻ってきておどろいた。なんと半月も留守にしていたようだ。だから一刻も早く、サーヤ姫の元へ向かわねばならないのだ」
多分、ちょっとした浦島太郎状態になるんだ。だからシン王子も一度帰ったって訳ね。
でも、半月も経っていたなら、もしかしたらサーヤ姫の命は......?
「そういえばサーヤ姫って、一体どうして危険な状態になっちゃったの?」
呪われてしまったのか、病気なのか、ケガなのか、それとも魔王にさらわれたのか、それすら知らないまま、わたしはこっちに連れてこられちゃったんだよね。
「そうだな......まず、サーヤ姫は重い病だ。我らの世界では、病になるとまずは呪術で攻撃されていないか確かめる。サーヤ姫には、それが全くなかった。あんなに誰からも愛される姫が、呪われる訳などないのだ!」
そっか。『誰からも愛される』姫なんだ。
わたしと同じ外見であっても、わたしとはまるで違う境遇なんだね。
わたしは実の親からも愛されなかったっていうのに......。


