右手にくっついている健斗君は、わたしの胴体にさえぎられて、左手の時計を見ることができなかった。それで私は、健斗君にも見えるように、両手の甲を向かい合わせにして説明した。
「それがね......二時なの。日付が変わらないまま、二時。あ、秒針が変だ!」
もしかしたら止まっているのかと思ったけれど、よく見たら動いている。
......とても、ゆっくりと。
わたしが感じる一秒と、秒針が刻む一秒とでは、かなりのずれがある。
「いちと、にぃと、さんと、しぃと......」
おばあちゃんに教えてもらった、時計がなくてもなるべく正確に十秒を計る方法。
数を数える時、「と」を間に入れると、割と正確な秒数を計れるんだって。
それで数えてみたら、わたしが十秒だと思った頃に、やっと秒針が二つ進む。
つまり、五秒で一つしか秒針が進んでいないっていうこと?
「沙也ちゃん、多分、元の世界とこっちの世界では、時間の進み方が違うんだよ。こっちの五秒は、オレ達の世界の一秒か......。ということは、こっちの方が五倍位速く時間が進んでいる計算になるんじゃないのか?」
「どういうこと?」
「つまり、オレ達の世界で一日過ごしたら、こっちは五日過ぎちゃうってこと。それだけ、早く年取っちゃうんだから、時間の流れとしてはこっちの方が早いんだ」
「ということは......向こうにいたのが夜中の十二時頃で、今は二時だから、こっちの世界に来てから、十時間位経ってることになるんだよね?」
私たちの世界で二時間経過しているから、その五倍もの時間がこっちで過ぎている計算になるっていうことだと思う。


