朝食を食べ終わったわたし達は、早速馬車に乗ってサーヤ姫が療養しているという館へ向かった。この世界、やっぱり車はなく、シンデレラと同じように馬車で移動するらしい。
「そういえば、シン王子は?」
「一度自分の国へ帰った。何日も留守にする訳にはいかないからな」
「え? 何日も? そうだっけ? ふわぁ」
隣に座るアンドリュー王子へ質問しながら、あくびをひとつ。
馬車に揺られて、心地よい振動にちょっと眠たくなる。
昨日寝たのは結局十二時頃だったもん、普段十時には寝ている良い子のわたしにとっては、ちょっと寝不足なのかも。
ん? 今って何時?
あわてて左手のうで時計を見て、目を疑った。
「ねえ、健斗君。わたしの時計、こっちに来ておかしくなっちゃったのかな?」
中学校の入学祝いに、離れて暮らすお父さんから送られてきた水色のうで時計......。
メッセージも何もなく、ネットショッピングを利用したと思われるそれは、直接お店からおじいちゃんの家に届けられた。
一応、お礼のはがきは書いたけど、その後は何も言ってこなかったっけ。
使いやすくて可愛いから気に入ってはいるけれど、いつも時計を見るたびに、やっかいもの払いされた代償のような気がして、複雑だった。
この時計は、アナログ表示の横に小さくデジタル画面もついていて、そこには日付が表示されている。
「沙也ちゃんの時計は今、何時になってる?」


