時の流れが違う世界
「オレの家があそこにあるのは、日々その悪い魂をしずめるためでもあったんだ。でも、オレの魂が抜けた瞬間、しずめるパワーも抜けちゃうからさ。それで、怨霊がその一瞬のスキをねらって、自分と同じ恐ろしい目にあわせようとしたんだ」
「あんなに怖かったのは、悪霊になってさまよわなくちゃならなくなった時の気持ちが、わたしに伝わったからだったんだね......」
「おそらく、ね。」
思い出すだけで寒気がする。悪霊が元々どんな人なのか、そもそも人間だったのか、何をしでかして悪霊になり果てたのかは、怖くて知りたくない。
わたしは臆病だから、今までの不思議な体験だって信じたくない。
でも、健斗君は、あの家に住み続けて魂をしずめていたなんて。
実は、すごい人なのかも知れない。
「うちの父が沙也ちゃんに渡した五芒星のペンダント、結構効き目があるはずだからさ。これ、力のある人から頂いた、いわゆるパワーストーンでもあるんだ」
「そちらの世界にも、そういった石があるのか」
アンドリュー王子が、わたしの首につけられたペンダントをじっと見つめている。
「うん。よく女の子がお守りとして身に付けたりして、結構みんな持ってるよ」
「その辺のと一緒にするなよ。これはホントにすごいんだってば。今、日本で、いや、世界で一番のお祓いをする人からもらったんだからさ」
「なるほど。デザイン的には社務所で売ってたのとあまり変わらないけど、すごいんだね、これ。......ところでアンドリュー王子、このスープおかわりしてもいい?」
わたしの食欲は、こっちの世界でも健在だ。
手首がもぞもぞして、常に「オレも腹へった」なんて聞こえるけど、聞こえないふりをしてしっかり食べた。そもそも人面瘡なんて、どこにお腹があるの?


