ドアが開いた。
......わたし、きっとまだ夢を見ているんだ。
こんな恰好、宝塚かコスプレでしかお目にかかれないでしょ、普通。
まず目に入ったのは、黒いブーツに真っ赤な細身のパンツ。それから、何やら装飾品がいっぱいついた上半身。マントをさっそうとひるがえしてずんずん近寄ってきた。
わたしのベッドをのぞき込むその顔は......。
ややウエーブのかかった、短めの黒髪。シャープなあごのライン。鼻筋くっきり、意思の強そうな眉。
何より一番印象的なのは、その目が澄んだアイスブルーだということ。
わたしの肩にいた時は、直径五センチ、目なんてただへこんだだけだったからよくわからなかったけど。
め、めっちゃ美形じゃないのっ!
許せる。このルックスなら、これだけ手のこんだコスプレしても、許せちゃう。
きっとこの人がコスプレイベントなんかに行ったら、写真撮影の人だかりができる。
行ったことないけどさ。
とにかくこの美形が、アンドリュー王子だということはわかった。
どうやってわたしの肩から抜け出せたのかは不明だけど。
「おはよう、沙也。ぐっすり眠れたか?」
声は肩にいた時と同じだった。ああ、間違いなくアンドリュー王子だ。
「おはようございます。ものすごくいっぱい質問があるんだけど」
「だろうな。だが、腹が減ってはおらぬか? 朝食をとりながら、説明してやろう」
朝ご飯! これは期待できるんじゃない?
「是非ともお願いっ!」
アンドリュー王子は一度部屋から出て、すぐに戻ってきた。


