異世界巫女修行はじめました~理不尽な現世を飛び出して優秀な呪術師と一緒に異世界で人助けをします~


 命を取られるんじゃないかっていう、本能的な絶望感と逃げだしたいっていう気持ち。

 目をつぶっているはず。何も見えないし想像もしたくない。なのに、なぜか脳裏に浮かぶのは、血みどろの包丁とそれをいつ振り下ろされるか、という緊迫した空気。

 こわい。誰か助けて。

 両肩の二人も、今は何もできないのだろう。

 この怖さは、健斗君が乗り移ろうとしているせいなのか、それとも他の『何か』のせいなのか、今はそんなことどっちでもいい。


 とにかく、恐ろしかった。

 怖くて、小さくふるえてしまう。

 歯の根が合わず、カチカチと音を立てそうになるのを、必死に歯をくいしばって耐える。

 両手は、冷汗をしっかりにぎって、固くなっている。