命を取られるんじゃないかっていう、本能的な絶望感と逃げだしたいっていう気持ち。
目をつぶっているはず。何も見えないし想像もしたくない。なのに、なぜか脳裏に浮かぶのは、血みどろの包丁とそれをいつ振り下ろされるか、という緊迫した空気。
こわい。誰か助けて。
両肩の二人も、今は何もできないのだろう。
この怖さは、健斗君が乗り移ろうとしているせいなのか、それとも他の『何か』のせいなのか、今はそんなことどっちでもいい。
とにかく、恐ろしかった。
怖くて、小さくふるえてしまう。
歯の根が合わず、カチカチと音を立てそうになるのを、必死に歯をくいしばって耐える。
両手は、冷汗をしっかりにぎって、固くなっている。


