シン王子が言葉に詰まっている。
「我々もサーヤ姫の命を最優先に、ありとあらゆる手段を講じた。ついには我が父王に『王位とサーヤ姫、どちらが大事だ!』と怒鳴られながら、危険を冒してこちらの世界へ来たのだ。この、シン王子と共に、最後の希望である『沙也』を連れて行くために」
「わたしが行けば、本当にサーヤ姫は助かるの?」
「おそらく、な。我が国最高位のシャーマンが、そう申しておる」
「そっか。わたし、まだ全然理解できてないけど、とにかくわたしが行けばサーヤ姫が助かるなら、やってやろうじゃないの」
「ありがとうございます、沙也。きっと、あなたにとっての試練も、これで乗り越えられると思うのですよ」
健斗君が、濡れた髪をタオルドライしながら、戻ってきてくれた。
「体をもう一度清めたし、もうすぐいい時間になるな。ちょっと待ってて、準備しとくから」
離れ専用の玄関に行って、何やらごそごそ。
室内へ戻ってインターホンをいじって、テレビのコンセントを抜いている。
目覚まし時計の電池を取って、電話の線もオーディオの線も抜いちゃった。
さらに、自分のスマホの電源も落としている。
「沙也ちゃんも、悪いけど電源オフにして」
そう言って、わたしがスマホの電源を落としたのを確認してから、健斗君は話し始める。
「あのさ、自称王子のお二人さんが今、肩にすみついてるだろ? オレはどこに行けばいい訳?」
ど、どこにって、まさか......!!


