最寄駅から徒歩五分。
「ここ?」
「そう。君もよくご存じのここ。今年の夏祭り、バイトしてくれたでしょ?」
「ってことは、健斗君、跡取り息子だったりするの?」
「このままいくと、そうなる、かな?」
そこは、市内では一番大きく、歴史の古い神社。
地元の人からはもちろん、全国的にも有名な観光名所にもなっている。
鳥居をくぐり抜け、先ほどの小さな神社とは比べものにならないほど大きな境内を歩き、手水を使ってからさっきと同じようにお参りをした。なるほど、神社の跡取りだったらお参りの仕方もカンペキ、だよね。
それから、健斗君は社務所の奥にある扉を開けて、わたしを案内してくれた。
「こっちが自宅。父に話を通しておくから、一緒に来て」
そ、そりゃあ、ご訪問しちゃったからあいさつしなくちゃって思ってたけれど、ちょっと心の準備をさせては......もらえないらしく。
やや時間を置いて、宮司さんこと健斗君のお父さん登場。そういえば面差しがちょっと似ている、かも? いや、顔より体格が似ているのかな。
「お久しぶりです。以前アルバイトでお世話になった相馬沙也です」
「ああ、覚えてるよ、相馬さんは真面目に働いてくれた子だったからね。健斗からちょっと聞いたけど、大変だったんだね」
「はい......」
「健斗から親父は手を出すなと言われているけれど、心配だからこれを渡しておくよ」


