駅に着くと健斗君はわたしの分の切符を買ってくれて、彼自身は定期を使った。
「ここ、学校のそばだから。でもって、家はこの先の駅」
「ねえ......いきなりわたしが泊まりに行くのって、おかしくない?」
普通の感覚ではありえないでしょう? 学校も違う、知り合ったばかりの女の子が泊まりに来るなんて。
すると、健斗君が笑って言った。
「ああ、大丈夫。オレの家はよくこういう『困った人』が助けを求めに来るから、慣れっこなんだ。ただ、うちの父に助けてもらおうとしたら、結構お金がかかるよ」
「え? お父さんって、何屋さんなの?」
「家に着いたらわかるよ」
そう言いながら、ちょうど来た電車の音に、わたしの
「どんな家なの?」
という質問はかき消されてしまった。
身長百四十五センチしかないわたしは、混雑した電車が苦手だ。つり革も手すりも掴めないような時に限って、変な人が寄ってくるから。
でも今日は、息苦しくない。変な視線も、わざとらしくわたしに近寄ってくる人もいない。
不思議に思って、窓に映る車内を見てみたら、異様な黒いオーラを発して、健斗君がわたしを周りからつぶされないように守ってくれていた。


