どうせ大食いだと思ってるんでしょ?
「オレさ、いっぱい食べる女の子、好きなんだよね」
「え?」
「それだけのエネルギーを使えるってことだからさ。ダイエットとか言って、ちまちま残すのって、見ていてイヤなんだ。オレたちは『命』をいただいて生きているんだから、せめて与えられたものは大切にいただくっていう感謝の気持ちがないと」
「もしかして、それも『見える』の?」
まさか、ラーメン丼に入ったチャーシューを見たら、かわいそうな豚さんの一生が見えちゃったりとか......。
「ははは。さすがにそれはないよ。でも、そんなの誰にだって想像できる。だから、残したらタダじゃすまないぞ!」
健斗君はわたしに、いたずらっぽい笑みを見せた。
もう、外はすっかり暗くなっていた。
ラーメン屋さんを出ると、仕事帰りのサラリーマンやOLさん、これから塾に向かうのかなっていう感じの学生で、街はごったがえしている。
「さてと。そろそろ行くか」
「どこに?」
「オレんち。だって、自称王子様を存分にご披露してもいい場所なんて他にないだろ? あ、沙也ちゃんの家でもいいけど」
「だめだめだめ、絶対にだめっ! だってもう、アリバイ工作しちゃったし、それに......とにかく無理だからっ!」
こんなチャラい、でも多分優秀な男子を連れて帰ったら、おじいちゃんとおばあちゃんはびっくりして血圧が上がっちゃう!
「じゃあ、そういうことで、こっち」


