「大変だったよな。生まれてくる家は選べないから、君に逃げ場はなかった。小さいなりに必死に親のご機嫌をとりながら過ごしていたんだよな? 何でもひとりで背負いこまされて、両肩にまで得体の知れないものをくっつけられてさ。君は何も悪くないのに」

 どうして、そんな言葉が出てくるんだろう。なぜ、そんな悲しい目でわたしを見るのだろう。

 わたしの今までの暮らしを見てきたかのようなまなざし。

 健斗君の言葉は、わたしの涙腺を優しく壊してしまった......。

 ここがカラオケBOXで良かった。どんなに声をあげて泣いても、外には聞こえない。

 小さな部屋の大きなスピーカーからは、会話のじゃまにならない程度の音量で、Jポップが流れている。

 なんでかな?

 昨日会ったばかりの、チャラい男子に、わたしはどうして泣き顔をさらしているのかな?

「いっぱい泣くといいよ。涙は心を浄化してくれるからさ。今まで辛かったんだろ? この歳でここまで苦労してる子、なかなかいないもんな。気が済むまで泣いて、すっきりしよう、ほら」