拒否権はありません


「あれ、おとなしいな」

 たこ焼きをほおばりながら、健斗君はセーラー服に包まれているわたしの肩を見つめている。

「うん、朝、約束したの。わたしが洋服を着ている間は、絶対しゃべってはダメって。そんなことされたら、わたしが人形も持たずに腹話術をしているみたいじゃない」

「確かに」

「で、わたしはこれからどうしたらいいの?」

「どうしたらって......その人面瘡、何とかしたいんだろ?」

 わたしは首を思いっきり縦に振る。

「だとしたら、この自称王子様達の言うとおり、向こうの世界の沙也ちゃんを助けるしかないだろうな」

「......そっか。じゃあ、健斗君も協力してくれる?」

「いいよ。その代わり、お願いがあるんだけど」

「な、何?」

 健斗君は、また、ぞくりとするような雰囲気を身にまとい、うす笑いを浮かべてわたしを見つめた。


「無事に帰ってこられたら、ひとつだけオレの願いを叶えて欲しい」

 ......どうやら、わたしに拒否権はなさそうだ。