......シン王子が遠くを見つめながらため息をついている。サーヤ姫に対する熱い思いを今ここで語られちゃっても困るんですけど。

「ふうん。そっちの世界の沙也ちゃんも可愛いんだ。それより、そっちの世界にどうやってこっちの沙也ちゃんを連れてこうとしてる訳?」

「それについては、貴方のお力をお借りしたいのです」

「え? オレ?」

 突然話をふられておどろく健斗君に、ていねいな言い方ながら、断らせないような熱意あふれる語り口で、シン王子が今までにない、大きな声を出した。


「貴方もかなりの力をお持ちだとお見受けいたしました。ぜひ『サーヤ姫』の命を救うため、お力添えをお願いいたします」

「タダで、とは言わぬ。お前には我がファシド帝国のナイトの称号を与えよう」

 話に割って入ってきたアンドリュー王子に、健斗君がかみついた。

「いらないから、そんなもの! ......それより、そろそろ服着ないと店員さんが来るぞ、沙也ちゃん」

「ぎゃああ待って待って! 今すぐ着るから店員さんが来ないように入口ふさいでて!」

 まだしゃべり足りない二人を無視して、わたしは急いでセーラー服を着た。