両親は、私がまだ幼い頃に離婚した。

 お父さんと一緒に暮らしていたのは、四歳まで。

 お父さんとの最後の思い出は、神社のお祭りの時にしてくれた肩車。

 道路を練り歩くおみこしが見たくて、ぴょんぴょん跳ねるわたしをひょい、と持ち上げてそのまま肩車をしてくれた。

 お父さんはいつも、お出かけの時に「どうだ? これが大人の目線だ」と言って高い高いや肩車をするから、わたしもそれが当たり前だと思っていた。

 高くて、ちょっと怖いけど、おみこしがよく見えた。

 うれしくてはしゃぐわたしに、お父さんもお母さんもニコニコ笑顔で応えてくれたっけ。

 いつも三人一緒。仲の良い家族だと思っていた。


 だけど、お父さんにはわたしとお母さんより、もっと好きな人がいたみたい。

 わたしのことを、世界一可愛いと言っていたお父さんの顔を今でも覚えているのに。

 お父さんがある日突然、いなくなった。