「どどどどうしてそれをっ!」

 わたしは、その場に凍り付いてしまった。

「昨日言っただろ、オレ、見えるんだってば。いやなんだけどさ、見たくなくても見えちゃうの。君の両肩、昨日はまだそれほどはっきりしてなかったのに、今日はもうバッチリいるのが判る。......これ、かなりガンコにくっついてるから、オレの力だけじゃ離れないだろうな」

 ああ、血の気が引くってこんな感じなんだろうなって思った。

 真夜中にわたしが見たものが、このジャラ男にも見えちゃってるんだ。

 しかも離れないって......どうすればいいの?

「ねえ、どうにかできないの、これ......」

「できないこともないかも知れないけど、まずはちゃんと『見る』必要があるな」

「えええっ! 見せなきゃならないの?」

 こんな奴に見せたくないよっ!

「当然。見なきゃ対処法もわからない。見せたくない気持ちもわかるけど、沙也ちゃんは困ってるんだろ?」

 やだやだやだやだ!

 でも......このままだともっとイヤだ!

「真崎さん、お、お願いします......」

「うわ、他人行儀だな。健斗でいいよ」
 いえいえ、つい昨日まで他人だったんだから。あまりお近づきになりたいタイプじゃないし。だけど言われた通り呼んでみることにした。君付けくらいはした方がいいよね?

「じゃあ......健斗君、お願いします......」

 わたし、今、泣きそうなんですけど。

 そしてジャラ男こと健斗君は、笑みを浮かべてわたしをお店の外へ連れ出した。