「元気そうで良かった! じゃあ私は仕事に戻りますね!」
手を振って向こうへ行ってしまう彼女の後姿をただ黙って見つめる。
ポニーテールが左右に揺れて、彼女の小さな背中が遠ざかる。
背中にはやっぱり、真っ黒い、不幸のオーラが覆いかぶさっていた……。
その後、沙也ちゃんは人面瘡に取りつかれたり、異世界に召喚されたり、オレと一緒にこの家でバイトしたりと、その不幸のオーラは払拭されつつある。
だけど今、新たに『不安のオーラ』が漂いはじめていて、オレはそれを何とかしなくちゃならないと思っていた。
今はまだ、言えない。もっと修行を積まなくては。彼女とこの家を守るための修行を。
心の中でそっと呟く。
「ちっちゃい体で沢山苦労した君をオレは知ってる。だから、甘えても大丈夫だよ」
早く、この言葉を真正面から伝えられるようになりたい。
【番外編:完】


