「おい、早く立ち上がって魔物を何とかするんじゃなかったのか!?」
茫然としていた俺の下敷きになっていた慶が、また声を荒げる。
「あ、悪い」
彼女の手を借りて、立ち上がる。
よいしょ、と声を出して引っ張ってくれる彼女は、やっぱりまだ小さくて。
守ってやりたい、甘えさせてやりたいと思う保護者のような気持ちで見ていたはず、だった。
だけどなぜか、胸の奥にもうひとつ、別の感情が芽生えていて思いっきり戸惑う。
こんなのは、一巡目の人生以来、だろうか。
そんなはずはない。本当の自分は一巡目二十四歳、現在十六歳だから、合わせて四十歳のいい年したオッサンであることを忘れた訳ではない。
……慌てて周囲を見回すと、ワンピース姿の女性と『魔』がいなくなっていた。
「獅子舞さん、痛いところはありませんか?」
ぼうっとしていたオレを気遣うように、彼女が声をかけてきた。
オレは焦って、獅子舞の頭を上下に動かして元気であるアピールをした。


