異世界巫女修行はじめました~理不尽な現世を飛び出して優秀な呪術師と一緒に異世界で人助けをします~

 ……ああ、そうか。辛い環境で育ったんだな。

 父に捨てられ、実母と義父には邪魔者扱いされ、祖父母に引き取られたのか。

 親にも愛されない自分が、他人から愛されるはずがない、そう思っているのか。

 周りのみんなが幸せそうに見えて、嫉妬してしまう自分が嫌なのか。

 本当の自分を隠して、必死に虚勢を張って暮らすのがしんどいのか。

 頑張っていたらいつか幸せになれる……そんなはずはないと諦めているのか。


 何とかしてやりたい。

 このままじゃ彼女は、黒い感情に潰されてしまう。


「ちっちゃい体で沢山苦労した君をオレは知ってる。甘えてもいいよ」


 つい、言葉にしてしまった想いは、祭りの喧騒に紛れて彼女に届かないだろう。


「え?」


 獅子舞の口の中からそっと彼女の表情を覗いた。

 首をかしげて、彼女も獅子舞の口の中を見ようとしている。

 ……何だろう、この可愛い小動物のような子は!