「獅子舞さん、大丈夫?」
何度か聞いたことのある、彼女の声だった。
割と高めの、可愛らしい声。
「つかまってください。えっと、前足は、どこ?」
……前足は、地べたを歩くためにあるオレの足のことか? 掴むことはできないんだけどな。
ちなみに両手は、獅子舞の頭を支えている。
顎を動かすのも、両手を使うからできること。
それでもまずは、立ち上がるのが先だと思ったので、片手で頭を押さえ、もう片方の手を前に伸ばした。
「あった、前足!」
オレの手を両手でぐっと掴み、引き起こそうとしてくれている。
その瞬間、一気に『見えて』しまった。
彼女の真っ黒いオーラの正体が。


