異世界巫女修行はじめました~理不尽な現世を飛び出して優秀な呪術師と一緒に異世界で人助けをします~

女性は、オレ達の方へふらふらと近づいてくる。


「おい、どうした?」

 立ち止まったオレの動きを不審に思った慶が、小さな声で話しかけてくる。

「魔物を背負った参拝客がいる。かなりヤバい奴」

「マジか。伯父さん呼んできた方がいいんじゃないのか?」

「ああ、そうしよう」


 父さんを呼ぶため、オレは回れ右をして急いで動こうとした。

 すると、急な動きに対応できなかった慶が、つまずいて転んでしまった。

 引っ張られてオレも慶の上に重なるようにして転んだ。


「いてっ! おい、急に動くな!」

「悪い。でも、早く!」

「まずお前がどけろよ!」

「ちょっと待て! 見えない!」


 オレ達がパニックになっている時、ひた、ひた、と、足音が聞こえた。

 外は真夏の暑さで、倒れ込んでいるオレも地面に接しているところはとても熱い。

 なのに、足音が近づくにつれて、猛烈な冷気が押し寄せてくる。


 もう、ダメだ。『魔』にやられる。


 そう思った俺の耳に聞こえてきたのは……。