異世界巫女修行はじめました~理不尽な現世を飛び出して優秀な呪術師と一緒に異世界で人助けをします~


 新しくオレの母になってくれた人は、オレのことをとても可愛がってくれた。

 待望の一人息子だったらしく、寝る暇がないほどオレの世話を頑張っている。

 母さんも寝ないと倒れるぞ、と言いたいが、オレの口はまだ言葉を喋れる発達段階ではなく。

 オレは自分の背中スイッチが作動しないように、寒がるそぶりを見せて厚着させてみたり、色々考えて行動してみた。

 そしてひたすらよく眠る赤子になることで、少しでも母さんが休めるように配慮したつもりだった。

 ところが、他の大人からは「いつ見ても寝てばかりの赤ん坊」だと言われ、ムッとしながらも反論できず。

 ストレスをためながら、首すわり・寝返り・ハイハイの自主練に励むことしかできなかった。

 何しろ赤子だから、時間だけはたっぷりあった。眠くない時はひたすら筋トレをした。

 とは言え、何しろ赤子だ。まず、手が思うように動かない。

 何か周りで大きな音がすると、自分の意志とは関係なく「びくびくびくっ!」と大きく動いてしまう。

 自分で動かす時も、思った通りには動かず、なぜかカブトムシのような妙にぎこちない動きとなる。

 だいたい、指も動きがもっさりしていて、グーパーもスムーズにできない。

 手の中にはいつもゴミを握りしめている状態で、不快なのにそれを取ることすらできない。