よくあるファンタジーでも、簡単に王子様が一目ぼれした娘を無理やり連れてくるとか。
そのあげく「王位なんて捨ててもいい、君と結婚できるなら」なんて言っちゃってさ。
どこの世界に、王位を放り投げてその辺の娘と結婚しちゃう王子がいるの?
その国の帝王学ってそんな程度のものだったの?
国王として国民に果たす義務を、一体なんだと思ってるんだろう、全く。
そんな王位も簡単に捨てちゃうような王子、町娘なんてもっとあっさり捨てるのがオチでしょ。
......わたしったら、いつからこんなひねくれたものの見方しかできなくなったのかな。
久しぶりに、お父さんとお母さんのことをちょっとだけ考えた。わたしの事、もう忘れちゃってるような両親に未練はない。夢を見るのもあきらめた。わたしは勉強をがんばって、奨学金で大学に進学して、お給料とボーナスがたっぷり出る会社に就職して、まじめな人生を送るんだから。
いろんなことを考えていたら、寝付けなくなっちゃった。
頭に浮かぶのは、さっき見た絵本。
頭の中に流れるのは、シンデレラのテーマソング。
だから、もうわたしは夢見る少女じゃないの!
自分に言い聞かせるように、おとぎ話を否定した。


