「そんないい子なのに、沙也ちゃんってオーラがめっちゃ暗くてさ。何か悪いことが起こりそうで気になっていたんだ。いつか会えるかも、なんて考えて、君の学校のそばのドーナツ屋へ下校時間を狙って通ってみた。やっと会えたと思ったら、両肩に変なの二つくっつけてたから、チャンスだと思った。......で、今に至るわけ」
全然、気が付かなかったのも無理はない。だって相手は獅子舞の中の人だったんだから。
でも、見られていたのは、今となってはいやじゃなかった。
「わたしの事、前から知ってたんだね。夏休み中の神社のバイト、結構いいお金になったから、お給料分は絶対がんばらなくちゃって思って働いたの。わたしは、仕事を途中でサボる人がいやなだけだよ。でも、誰かに認めてほしい、がんばったねって言って欲しい気持ちはあったの。だから......」
「沙也ちゃん、今まで本当にがんばったね。君はこんなにちっちゃいのに、いっぱい色んなものを背負いこんじゃって、しかも人面瘡までくっつけちゃってさ」
また、涙腺がゆるんじゃいそうだよ。
「もうっ! どうしてそんなにわたしを泣かせるようなことばっかり言うの?」
「だって、泣いてる沙也ちゃんは、いつもの強がり沙也ちゃんじゃないだろ。本当の君は、素直で、甘えん坊で、ナイーブな心の持ち主なんだ。いっぱい愛されたかった、がんばり屋のちっちゃい女の子を大事にしたいだけだよ」


