「やっと、目が覚めた?」
ぼんやりとわたしの目に映ったのは、大きな男の人。
あ、これは、健斗君のお父さんじゃないの!
「おはようございます。すみません、寝坊しちゃいました、よね?」
「いや、気にしないで。具合の悪いところはないかな?」
頭はスッキリ、どこも痛くない。不思議なことに、ちょっとだるくて重い感じがしていた腰のあたりも、すっかり元通りになっていた。
「沙也ちゃん、おはよう。もう、お昼になるよ。夜中の十二時にこっちへ戻ってから、すぐにまた眠っちゃったんだ。移植のあとだから、ゆっくり休ませてあげたいけれど、お腹も減ったんじゃない?」
部屋の入り口から声をかけてきたのは......人面瘡じゃなくなった健斗君だった。どうやらシャワーを浴びていたらしく、髪の毛をタオルで拭いている。それを見て、すぐに理解した。
わたしは無事にこっちの世界へ戻ってきて、健斗君は元通り。
「お、おはよう......あの、健斗君、無事?」
「ああ、大丈夫だよ。沙也ちゃんも元気?」
「うん、大丈夫。どこも痛くないよ」
「それじゃあ、私は仕事に戻るからね」
......健斗君のお父さんが、行ってしまった。


