「マスターは、魔をあやつる『力』があります。一方の私達巫女姫は、魔を追い払う『力』があります。魔を寄せ付けないように巫女姫が『力』を発揮し、それでも魔が来てしまった場合、マスターが『力』を使うのです。巫女姫が病気になるのは、マスターが魔をおびき寄せるからだって言われて......。私が病気になったせいで、マスターが悪く言われるのは、がまんできなかったのです」

「その気持ち、わかるな......」

 わたしがそう言うと、サーヤ姫はちょっと赤くなりながら呟いた。


「マスターは、何も知らない七歳の私を、優しく、ときに厳しく導いてくれました。『サーヤは素直だ、サーヤは努力している、サーヤはもっと伸びる』って励ましながら。見た目や結果だけではなく、そこに至る努力をきちんと評価してくれたのは、マスターがはじめてでした。私の全部を、ちゃんと理解してくれる方にめぐり合えて、私は幸せです」

 サーヤ姫は、柔らかくほほ笑んでいる。

 そっか。だからサーヤ姫はこんなにマスターが大好きなんだ。

 その気持ち、ちょっとわかるような気がする。

 だって、ね?

 健斗君の寝顔を見てから、わたしもサーヤ姫にほほ笑んだ。

 明日お別れするのが、なんだかとってもさみしいな......。