移植から三日が過ぎた。
明日、わたしたちは元の世界へ戻る、という夜。
「......沙也さん、起きてます?」
サーヤ姫がこっそり声をかけてきた。
「うん、起きてるよ」
「最後の夜だから、少しだけおしゃべりしませんか?」
「そうだね。健斗君も寝ているようだし」
健斗君は、ぐっすり眠っている。
「沙也さんは、今まで色々ご苦労されてきたんですね」
「うん......そうだと思ってた」
「思ってた?」
「何かね、人生つまらなかったの。自分より恵まれた人ばっかりだと思ってた。みんな両親がいていいな、とか、わたしなんていらない人間なんだってずっとひがんでた」
「その気持ち、わかりますよ」
「でも、サーヤ姫はみんなから愛されてたじゃない?」
王子二人から求婚されて、この世界ではとても愛された巫女姫だって聞いたけど。
私の疑問に対して、サーヤ姫は悲しげな表情を浮かべた。


