絵本の世界にあこがれて


 今では現実的なわたしも、ちっちゃい頃は「プリンセス」になりたいと本気で思っていた。

 鮮やかな色のドレスを着て、王子様とダンスを踊り、いつまでも幸せに暮らすプリンセスになれると信じていた。

 三歳の誕生日にお父さんからプレゼントされた「シンデレラ」の絵本が、当時の宝物。

「ママハハ」と義理のお姉さんにいじめられながら、毎日みじめな生活を送っていたシンデレラ。

 心の優しい彼女を救ってくれたのは、魔女と小さな生き物たち。

 魔法で美しい姿に変身した彼女に一目ぼれした王子様が、ガラスのくつを手がかりにやっと探し出してくれて。

夢のようなプロポーズ。

 そして二人は、幸せに暮らしましたとさ......。




 それを信じて、小学校卒業まで耐えた。

 いつか自分にも王子様が現れて、この生活から救いだしてくれるはずだって。

 でも、現実はそう甘くはなかった。