α様は毒甘な恋がしたい



『ごめん。美心のオメガフェロモンに当てられて、とんでもないことをしちゃったけど。やっぱり俺、美心とは番になれない!』


『本当にごめん』と深く頭を下げた戒璃君は、そのまま私の前から走り去ってしまったんだ。




 どう? 酷い話でしょ?

 極上の夢を見せておいてからの、地獄へドーン。


 私は何が起こったのかわからなくて。

 一人取り残されたまま、ボーっと固まっちゃって。


 えっ? 

 私たちって『運命の番(つがい)』じゃないの?

 アルファの戒璃くんに、私は首を噛まれたんだよ。

 歯型がくっきりとついているのに、番になれないってなに?!



 詐欺師に騙されたような虚しさと絶望感に襲われたのを、今でもはっきりと覚えている。