積極的な女は、ひかれてしまうかもしれない。

 戒璃くんは控えめな女が、好みかもしれない。


 そんな不安が沸いてしまうけれど……

 唇を離し、潤んだ瞳で戒璃くんを見上げ、私は悲しみを言葉にする。


「お願い……もう一度だけ……」


 キスして……

 戒璃くんから……


「可愛いおねだり。いいよ」



 甘えを受け入れてもらえた喜びに、脳がとろけだす。


 戒璃くんの唇が沈み込んで、私の唇の形を変えてしまう。

 そんな極甘でせつない口づけ。


 もっと触れていたいのに。

 戒璃くんの唇は、もどかしげに私から離れていき


「たくさんたくさん笑って、幸せに生きてね」


 笑顔で私の頭をなでると、彼はバルコニーを後にした。



 これが私と戒璃くんの

 平凡オメガと極上アルファの

 幸せと悲しみが入り混じった

 甘苦い恋の物語。