歌い終わって、ギターをベンチに置いた戒璃。
「俺の恋心を奪ってくれてありがとう。俺のことを好きになってくれてありがとう」
せつなくて苦しい、サヨナラの言葉をこぼすんだもん。
込み上げてくる欲望を、私はごまかすことができない。
戒璃くんとサヨナラをするから。
ちゃんとするから。
だからお願い……
「戒璃くん、噛んで……」
「えっ?」
「私の首」
「……なっ」
「私が戒璃くんに恋をした証……私の首に残して欲しいの……」
大好きな人と過ごしたこの時間が、夢じゃなかったって。
心が通じ合った奇跡が、ちゃんと起きたんだって。
首のうしろをさすって、確かめたいの。
幸せをかみしめたいの。
だからお願い……



