ステージの際まで進んだ祈さん。

 抱えられている私は、視線を下げツバをゴクり。


 ステージ下にはたくさんの生徒たちが、群がっていて。

 明らかに理性を飛ばしていて。

「オメガをくれ~」

「早く食わせろ~」

 ゾンビのようにふらつきながら、私に向かって手を伸ばしている。


 ステージをよじ登る人が現れ始めた。


 「美心、逃げて!」

 「祈に噛みつけ! 顔でも首でもいいから!」


 私の視界の外で、戒璃さん達4人が何かを叫んでいるけれど。

 「オメガが欲しい~」

 「今すぐ欲しい~」

 私を狙うアルファ達の怪物のようなうなり声で、かき消されて聞き取れない。


「アルファのみんな、お待たせ。極上のオメガちゃんよ。思う存分堪能してね」


 祈さんは、赤ピンクのポニーテールを振り乱しながら


「いち~ にの~」


 お姫様抱っこ状態の私を、大きく前後に揺らすと


「さーん!」


 理性を飛ばしているアルファの群れめがけて、私を放り投げた。