α様は毒甘な恋がしたい


 筋肉がほとんど動いてくれない私の体。

 床にしゃがみこんだまま、ぼやける脳をできる限りフル回転させてみた。


 ヒートって、オメガ特有の発情行為のことだよね?

 アルファを誘惑するため、甘いフェロモンを無意識にまき散らしてしまうという、あの。


 もし八神先輩の言う「ヒートテロ」が、本当に起こっているのだとしたら。

 私も含め、今この講堂にいるアルファ全員が立ち上がれないのは、オメガフェロモンを吸い込んでしまったせい?

 そうなると、この講堂のどこかにオメガがいるってことになるけれど……


 客席にうずくまる生徒たちの誰かが、怒り声を突き上げた。

 
「誰だ、オメガフェロモンをまき散らしているのは!」

「あの子じゃない? ステージにいる転入生!」


 最前列の中央にいる女子に、指をさされてしまったけれど……


 ……えっ、私?


「ほんとだ。あの転入生から、甘ったるい匂いがするぞ!」


 待って、待って。

 確かに私は今、熟れすぎた桃のような匂いに包まれているけれど。


 私はアルファだよね?
 
 そうだよね?

 オメガだったら、アルファ学園になんて入れないんだから。