顔を上げる勇気なんかない。
私の視線は、床に突き刺さったまま。
自分でもわからない心のざわめきに、戸惑ってしまうんだ。
ピタッと足音が消えた。
私の瞳には、ツヤめく革靴が映りこんでいる。
しかも3足も。
私の肩に荒っぽく沈み込んだ手のひら。
「ひゃっ!」と、条件反射で顔を上げてしまった。
「今日はよろしくな」
目の前で、金髪をワイルドに揺らしているのは雷斗先輩だ。
私が昏睡状態から目覚めて学園に行った日に、教室に飛び込んできた人。
知り合いじゃないって言ってたのに、なんでかなぁ?
「美心、オマエ緊張しすぎ。顔引きつってんぞ。笑えって」
八重歯が見えるくらいヤンチャめに笑いながら、私の頬をつついてくるし。
美心って呼び捨てだし。
『あなたは雷斗先輩の妹なのよ』
そう言われたら納得しちゃうくらい、距離感が近いんですけど……



