α様は毒甘な恋がしたい


 僕は向かいの店の壁を登り、屋根瓦に身を伏せた状態で眼を光らせる。

 広い店中、色鮮やかな着物をまとった若者たちが、見えるところだけでも20人ほど。

 鉄格子の外にいる人間たちに向かって、義務みたいに手を振っている。


 男子も女子もいるけど、みんなハルヒと同じくらいの年齢っぽいな。


 お店っていうことは、あの人間たちは売り物ってことだよね?

 ほんと酷い人種。

 同族なら、互いを敬いながら仲良く暮らせばいいのに。

 僕たちツチノコを見習って。


 屋根の上で上半身を伸ばした時

「……えっ」

 僕の瞳は捕らえてしまった。


 頑丈な鉄製の柵で覆われた店の中。

 白桃色の高貴な着物を着て、引きつり笑顔でお客さんに手を振る、ハルヒの姿を。