α様は毒甘な恋がしたい


「ごめんなさい」と涙を飛ばしながら背を向けた彼女が、あまりにも可哀そうで。

 放っておくことなんかできなくて。

 僕は後先考えず、声を張り上げた。


「人間の言葉くらい、わかるっつーの! 僕を見くびるな、バーカ!」



「えっ?」と、目を丸くした彼女。

 僕だって、短いしっぽがピンと張るくらい驚いたよ。


 人間が里を荒らしに来るたび、仲間の中で僕だけが人間の言葉を理解できていた。

 だからその逆。

 僕がしゃべった言葉をわかる人間も、どこかにいるんじゃないかって考えたこともあったけど……


 本当にいたんだから。

 ツチノコの僕と会話ができる人間が。



 その子の名前は【ハルヒ】 

 春の陽ざしって書くらしい。

 人間には男女のほかに第二の性というものがあって、ハルヒは稀少種の【オメガ】なんだとか。