α様は毒甘な恋がしたい



 僕は今ステージに立ち、客席を見渡している。

 まるでコンサートホールのような、学園の講堂。

 客席には全生徒が十分に座れる椅子が並んでいて、一列ごとに高くなっているから後ろの席の人でも見やすい設計になっている。


 僕はステージのふちに腰をおろし、両足をブラブラブラ。

 振り向きながら、肩にかけたベースのチューニングをしている九重(ここのえ)(いのり)に、だらけ声をとばした。


「ねぇ、いのりん。僕、暇なんだけど」


 今回は学園の制服が衣装だから、着替える必要もないしさ。

 僕は波打つ栗毛を耳にかけ「つまんないー」と、天井に向かってぼやく。


「孝里、ドラムのチューニングはあれで終り?」

「もっち完璧。僕たちの楽器を講堂に運び入れた時に、マネージャーもやってくれたみたいなんだ」

「楽器は体の一部なんだから、人任せにしたらダメよ」

「だから、ちゃんと自分でもやったって!」

「はいはい、そういういことにしておいてあげる」