α様は毒甘な恋がしたい


「急に声をかけてしまってごめんなさい」

「……」

「きのう十守(ともり)孝里(こうり)くんに渡された歌詞カードに、ここに来るように書いてあって……」



 申し訳なさそうに、肩をすくめる美心。

 不安そうな顔で、手に持ったアルバムサイズの冊子の写真と俺の顔を見比べている。


 動揺しすぎると、俺は意味不明な行動をとってしまうらしく……

 頭を覆っていたフードを、さらに深くかぶり。

 かけている眼鏡のズレを、なぜか直し。

 美心の透き通った真ん丸な瞳を、見上げるように見つめてしまった。



「もっ、もしかして人違いでしたか? ごめんなさい、早とちりでした」

「……えっ」

「本当にすいませんでした」

「ちょっと……」



 深く頭を下げ、走り去ろうと体を180度回転させた美心。


 ――行かないで欲しい。

 ――俺の前から消えないで欲しい。

 ――夢でもいいから、側にいて欲しい。


 湧き上がる欲望に急かされた俺は、冷静な判断なんてできなくて。

 気づいたら、走り去ろうとしていた彼女の手首を掴んでいた。